死後事務の重要性について
死後事務とは、亡くなった後に行う様々な手続きのことです。
これは亡くなった方の代わりに必ず誰かが行うものです。
1.死後事務の手続き
死後事務とは、次のような手続きのことを言います。
・死亡届や火葬許可申請書など役所への届け出
・通夜、葬儀、納骨の手配
・公共料金、クレジットカードや携帯電話の解約
・遺品整理、住まいの荷物の片付け
・SNSやサブスク(定期購入)の解約
・ペットの保護、委託先の決定
こうしたことを家族や周囲の人が短期間で進める必要があります。
2.死後事務の重要性
死後事務の中には、亡くなる前にご自身で準備できることがいくつかあります。
例えば、エンディングノートに財産の一覧や各種契約や支払い方法の一覧を書き残しておくことや、インターネットのアカウントやパスワードの一覧を作る、遺言書を作成しておくことな
どです。ちょっと難しそうだなと思っていても、やってみると意外と簡単にできることも多いです。
ご自身で事前に準備をしておくことでこんなメリットがあります。
① 遺された方の負担を軽減できる!
予め、手続きを進めておくことで、遺された方の負担を軽減できます。死後事務をしてくれる人が一緒に住んでいる場合はいいのですが、遠方にお住まいの場合や普段から密にお付き合い
をしていない場合は、何をどうすればよいか、またどこに何があるのかわからない状態で何度も自宅と役所などに足を運ばなければならなくなる可能性があります。
誰かがやってくれるからと安心せず、その誰かの身になって今から考えてみるといいと思います。
② 放置によるトラブルを防げる
公共料金の支払いやサブスク、年金受給の停止を放っておくとその分料金が発生したり不正受給とみなされる可能性があります。悪気はなくても残された人がこのようなトラブルに巻き込
まれないように、どの支払いがどの口座で行われているか提示しておくと安心でしょう。なお、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方の手続きは原則不要です。
③ おひとり様や家族と疎遠の方は特に必要
身元保証や相続手続き、後見人等を頼める方が近くにいない場合には専門家と死後事務契約を結んでおくことが老後の安心に繋がります。
死後事務委任契約とは、亡くなった後に必要となる各種手続きや事務作業を、あらかじめ第三者に委任しておくための契約です。
④ 自分の望む「最期」が叶えやすくなる。
「葬儀は家族で」「お墓には入らず散骨して欲しい」など自分の意思を実現しやすくなります。
エンディングプランを考えることで不安が減り、これからの人生を明るく過ごしていけるようになるでしょう。
3.死後事務の具体的な内容
次に死後事務の内容をそれぞれの期限の目安を解説します。
死亡届や税務申告など、法律上、決まっている手続きもありますので、各期限に注意しながら進めていってください。
《死後1~3日以内》
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項目 |
内容 |
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死亡届の提出 |
死亡診断書と一緒に提出(7日以内) |
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火葬許可証の取得 |
死亡届と同時に交付される |
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通夜・告別式の準備 |
日程調整・僧侶の手配など |
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埋葬許可証の取得 |
火葬後、火葬場から交付 |
《死後1週間以内》
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項目 |
内容 |
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健康保険証・介護保険証の返却 |
市役所または保険者へ返却 |
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年金受給停止の手続き |
日本年金機構へ(年金証書など持参) |
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死亡通知の送付 |
勤務先・友人・知人へ通知状を送る |
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住民票の除票 |
自動的に除票されるが確認推奨 |
《死後2週間以内》
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項目 |
内容 |
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遺品の整理開始 |
必要な物・証明書・契約書を探す |
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公共料金などの名義変更・解約 |
電気・ガス・水道など |
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クレジットカード・携帯電話の解約 |
各社に死亡届を提出 |
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SNS・メールアカウントの整理 |
デジタル遺品の対応 |
《死後1か月以内》
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項目 |
内容 |
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相続人の調査 |
戸籍謄本を集めて相続人確定 |
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相続財産の調査 |
不動産・預金・証券・借金など |
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未支給年金・埋葬料・葬祭費の請求 |
国保・厚生年金などに請求 |
《死後3か月以内(重要期限)》
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項目 |
内容 |
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相続放棄・限定承認の手続き |
家庭裁判所へ申立て(※要熟考) |
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遺産分割協議の開始 |
相続人間で話し合い・協議書作成 |
《死後4~6か月以内》
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項目 |
内容 |
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預貯金の解約・名義変更 |
各金融機関へ |
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不動産の相続登記申請 |
法務局へ(司法書士の依頼が多い) |
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有価証券・車両の名義変更 |
証券会社・陸運局など |
《死後10か月以内(重要期限)》
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項目 |
内容 |
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相続税の申告と納税 |
基礎控除を超える場合、税務署へ |
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必要に応じて税理士へ相談 |
複雑な相続や高額資産がある場合推奨 |
《1年以内》
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項目 |
内容 |
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法要の実施 |
四十九日、一周忌など |
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遺品の整理完了 |
家屋売却・処分含む |
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永代供養・納骨堂などの検討 |
菩提寺または納骨施設へ相談 |
このように死後事務は多岐に渡り、長ければ1年ほどの時間を要します。
必要な手順や手続き先を把握しておくだけでも、この処理スピードは変わってくるでしょう。
4.死後事務をスムーズに行うには?
① 事前に「エンディングノート」や「死後事務委任契約」をしておく
② 家族や信頼できる人と話し合っておく
③ 必要に応じて専門家(終活アドバイザー・司法書士など)に相談する
死後事務は必ずしも親族がしなければいけないことではありません。親族が遠方に住み、死後に何度も足を運ぶのが難しい場合などは、生前に死後事務委任契約を結んでおくことで第三
者が死後事務を受任することが可能です。その場合、死後事務委任契約を結ぶのは「本人」に限ります。
5.まとめ
このように亡くなった後に行う様々な手続き(死後事務)はたくさんあり、この手続きを期限内に順序よく進めていく必要があります。頼れる方や信頼できる方が近くにいなければ、生
前に死後事務委任契約をしておくことが有用です。
また、ご自分で準備できることは準備しておくといいと思います。
ご自身の希望する内容でエンディングプランを考えることも一つです。エンディングプランを立てることで、その後の人生をより明るく充実して過ごしていけるようになると思います。
そのためにもご自身の希望をエンディングノートに記載しておくことや、予め家族や信頼できる人に話しておくことが大切です。
死後事務は『亡くなった後の安心』を作る大切な準備です。
自分のためだけでなく、家族や周囲の大切な人への「思いやり」として今できることから始めてみましょう。
なかなか自分一人では難しいという場合は、当事務所にご相談ください。
実際に死後事務の手続を経験し、その大変さを知っている司法書士から適切なアドバイスをさせていただきます。